小規模個人再生の流れや最低弁済額と不同意になった手続きの対処方法
小規模個人再生は、債務整理の中でも最も効果的な方法のひとつで、借金を原則5分の1にまで減額できます。
給与所得者等再生と比較しても借金をより大きく減額できることが多いので、債務が多くて困っている方にはおすすめです。ただし、再生債権者の意向によって再生手続が左右される可能性があるので注意が必要です。
この記事では、小規模個人再生の要件や効果、給与所得者等再生との違いを解説します。
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小規模個人再生とは
個人再生をする人のほとんどが小規模個人再生を選ぶことになります。
借金の額が5000万円未満でおこなえる手続きで、小規模個人再生が認められたときの最低弁済額は100万円です。
小規模個人再生は、給与所得者でなくても利用でき、個人事業主やフリーランス、アルバイトの人でも安定した収入があれば利用できる手続きです。小規模個人再生は裁判所による判断と債権者(借り入れをした業者)からの過半数の同意を得られないと失敗となります。
小規模個人再生の要件
小規模個人再生によって借金を減額してもらうためには、再生手続の開始要件と再生計画の認可要件を満たす必要があります。これらの要件を満たすことで、小規模個人再生の認可をえることができ、借金を減額してもらうことができます。
再生手続の開始要件
小規模個人再生の手続には、再生手続の開始要件を満たす必要があります。
- 債務者が個人である
- 再生債権額が5,000万円を超えない
- 将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがある
- 借金の返済が不能なおそれがある
- 分割予納金(履行テスト)が支払われた
- 小規模個人再生をおこなう申請をした
再生計画の認可要件
小規模個人再生をおこなうための再生計画の認可要件として、借金を返済するための計画を作成して裁判所に提出し、裁判所から認可を受ける必要があります。
- 法律上の重大な違反がないこと
- 借金返済の計画が正しく、法律上の違反がないこと
- 再生計画が実行できる見込みがあること
- 不正がなく決められた再生計画であること
- 再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反しないこと
- 債務者が将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあること
- 借金の総額が5,000万円を超えていないこと
- 返済の計画総額が最低返済額以上であること
- 財産を保護するための規則を遵守していること
再生債権者による決議
小規模個人再生をするためには、再生計画が承認される前に、再生債権者による決議が必要です。もし、再生債権者の決議が否決されると再生計画は承認されず、借金を減額することができなくなります。
再生債権とは、個人再生後に返済する必要のある借金のことで、クレジットカードや消費者金融、銀行の借入などが該当します。また、未払いの奨学金や、友人や親戚からの借入も再生債権に含まれます。
小規模個人再生は、再生計画を提出した後に決議がおこなわれます。決議は集会ではなく、書面で行われるので、書面決議とも呼ばれます。
再生計画案は、2つのいずれかに該当する場合に否決されたものとして扱われてしまいます。
- 不同意の回答をした再生債権者が、再生債権者の総数の半数以上である
- 不同意の回答をした再生債権者の議決権の額が、再生債権者の議決権総額の2分の1を超える
小規模個人再生の効果
小規模個人再生では、債務額を最低弁済額(債務の5分の1から10分の1)まで減額することができます。例えば、借金が500万円の場合、50万円~100万円に減額できる可能性があります。
また、3年~5年間に分割して返済をすることができます。
借金を減額できる
小規模個人再生をすることで、借金を減らすことができますが、その方法は借金の総額によって異なります。
法律で定められている最低弁済額も借金の総額によって違います。
借金総額 | 最低弁済額 |
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100万円未満 | 全額 |
100万円以上500万円未満 | 100万円 |
500万円以上1500万円未満 | 借金総額の5分の1 |
1500万円以上3000万円未満 | 300万円 |
3000万円以上5000万円未満 | 借金総額の10分の1 |
個人再生において、借金の減額は手続きで確定した負債の総額によって違います。正確な負債総額は、手続きの中で債権調査をすることで確定します。
例えば、負債額が500万円、住宅ローンが3,000万円の場合、住宅ローン特則を利用すれば負債総額は500万円になります。
一方、住宅ローン特則を利用しない場合は負債総額が3,500万円になります。
分割払いができる
小規模個人再生では、減額された額を分割して支払うことができます。原則的に分割で支払う金額は3年間ですが、やむを得ない事情によっては5年間にすることもできます。支払いの頻度は毎月1回が基本ですが、3か月に1回などにすることも可能です。
小規模個人再生と給与所得者等再生のちがい
個人再生には小規模個人再生と給与所得者等再生の2つがあります。
小規模個人再生と給与所得者等再生の手続きの違いは要件、最低支払額、決議の有無です。
認可要件の違い
個人再生をするには一定以上の収入が必要ですが、小規模個人再生は収入基準がゆるく、給与所得者等再生は収入額が安定していなければなりません。
給与所得者等再生は、収入に変動が20%以上ある場合は再生計画が認可されないので、収入が安定している会社員や年金生活者しか利用できない手続きです。
小規模個人再生は、収入に変動があっても継続して収入を得られて再生債権を弁済できる見込みさえあれば利用できるので、個人事業主やフリーランスも適用できます。
ただし、主婦など自分名義の収入のない人は利用できません。
最低弁済金額の違い
小規模個人再生における返済額は、最低弁済額または破産時の配当予想額(清算価値)のうち高い方を超える必要があります。
清算価値が低い場合は、借金(担保を除く)の総額が最大で5%(30,000万円を超える場合は10%)まで減額することも可能になります。小規模個人再生では、基本的に、債権額を基準に返済額が決定されます。
給与所得者等再生の返済の総額も、最低弁済額または破産時の配当予想額(清算価値)のうち高い方以上にする必要があることは小規模個人再生と同じです。
しかし、債務者が支払うことのできる額も考慮されるので、返済額が小規模個人再生よりも少なくなる可能性があります。
再生債権者による決議の有無の違い
小規模個人再生の場合、再生債権者数の半数以上または再生債権額の過半数以上の消極的同意(再生計画案に対して異議を述べないこと)がなければ、再生手続は廃止され、手続は打ち切られます。
一方、給与所得者等再生の場合は、債権者の意向に関係なくおこなわれます。
異議を述べない再生債権者が、すべての再生債権者数の半数未満かつ再生債権額の2分の1以下である必要があります。
ただし、反対する債権者は少なく、信販会社や消費者金融、銀行などは異議を出すことはあまりありません。
2回目の個人再生・自己破産への影響の違い
給与所得者等再生と小規模個人再生では、2回目以降の個人再生や自己破産への影響が異なります。
小規模個人再生は、回数や頻度に制限がなく、何度でも申立てができます。小規模個人再生後にも、再度小規模個人再生や給与所得者等再生、自己破産を申し立てることができ、期間制限もありません。
給与所得者等再生をおこなった場合、7年間再度の給与所得者等再生や自己破産の申立てができなくなります。給与所得者等再生では、債権が強制的に減額されるので、何度も連続的に利用することができないからです。
ただし、給与所得者等再生が途中で失敗した場合、回数や期間の制限は適用されず、小規模個人再生も利用することが可能です。
小規模個人再生で不同意になった時の対処方法
不同意が出ても認可されるケースが多い
小規模個人再生で債権者が不同意になるケースがあります。しかし、債権者数に対して過半数を超える不同意になるケースは低く、個人再生の手続き自体が不認可になることは滅多にありません。ただし、債権者が2社しかいない場合は1社でも不同意になれば否決となることは頭にいれておくべきです。
給与所得者等再生を利用する
小規模個人再生で債権者から反対されて成立しなかったときは給与所得者等再生を選ぶしかありません。ただし、給与所得等再生は減額できる金額が小規模個人再生よりも少ないため、手続きをおこなっても生活が楽になる保証はもてません。状況によっては自己破産を選んだ方が良いケースもあります。
小規模個人再生の流れ
個人再生の手続きは個人でも申立てができますが、ほとんどは専門家である弁護士や司法書士に依頼しておこなっています。個人再生は借金の総額や所有する財産、収入などを全て含めて計算して本当に個人再生が必要か?別の手続きでも借金を解決できないかのアドバイスをもらえます。
弁護士や司法書士に個人再生の依頼を正式に出すと受任通知を各債権者(貸金業者)に通達してくれます。受任通知を受けた業者は取り立てや督促を債務者(あなた)にすることができなくなり、弁護士や司法書士に連絡しなくてはいけません。
受任通知は依頼した日から効果があり、弁護士や司法書士が貸金業者に対して受任通知を通達していない場合であっても、債務者(あなた)に対して電話がかかってきたときに依頼したことを告げれば直接の取り立てはおこなえなくなります。
再生計画案を作成するために債務者(あなた)の財産がどれくらいあるかを調査します。財産が多いほど個人再生の手続きで残る最低返済額が上がります。最低返済額を下げるために財産を隠すと個人再生じたいが否決される可能性があるので隠すことはやめましょう。
調査した財産も含めて申立てに必要な書類や再生計画案の作成をしてもらいます(個人で申立てをする場合は一人ですべて対応します)。
財産の把握と書類の準備が整ったらいよいよ裁判所への申立てです。裁判所の申立てには申立書、陳述書、債権者一覧表、添付書類(源泉徴収票、給与明細、財産目録、戸籍謄本、住民票など)を提出します。弁護士に依頼している場合は自分が裁判所に行くことはありません。
提出した書類などに不備がなく、審査が通れば申立てから約1か月後に再生手続き決定がされます。
再生計画案は借金をどれくらい減額し、3年間で支払っていくかを記載した計画案です。個人再生の一番の目的は再生計画案の認可なので重要な手続きの1つです。提出期限が1日でも過ぎると否決され手続きが終了します。弁護士に依頼している場合は任せることができるので安心ですが、個人でする場合は期限を守れるように行動しなくてはいけません。
小規模個人再生の場合は債権者数(借入先)の2分の1の業者から同意を得ないと個人再生は失敗します。また、再生計画案通りに返済できるか確認するための履行テストもはじまります。
債権者からの賛同を得て、約半年間の履行テストを終えると再生計画案の認可がされます。
再生計画案通りに毎月の返済をおこなっていきます。返済期間中は新たな借り入れをしてはいけません。
小規模個人再生に関するよくある質問
- 小規模個人再生の要件は?
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小規模個人再生によって借金を減額してもらうためには、「再生手続の開始要件」と「再生計画の認可要件」を満たす必要があります。詳しくは「小規模個人再生の要件」をご確認ください。
- 小規模個人再生と給与所得者等再生の違いは?
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小規模個人再生は収入のある個人やフリーランスの人でもおこなえる手続きで、最低弁済額も給与所得等再生よりも低いです。しかし、再生計画案の認可をもらうには債権者からの同意が必要です。一方で給与所得等再生は債権者からの同意は不要ですが、最低弁済額が小規模個人再生よりも高くなってしまいます。また、会社に属する人しか手続きがおこなえないため、個人やフリーランスの人は選ぶことができません。より詳しい情報は「小規模個人再生と給与所得等再生のちがい」をご確認ください。